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財政制度等審議会は、毎年教育予算を減らそうとする なぜ? [教育の無償化を]

【全教談話】財政制度等審議会の「平成30年度予算の編成等に関する建議」について
                          2017年12月13日
                          全日本教職員組合(全教)
                          書記長 小畑 雅子

1 11月29日、財政制度等審議会は、2018年度予算編成に向けた「建議」を財務大臣に提出しました。「総論」では、「経済・財政再生計画」が示す2016〜2018年の一般歳出の伸びを1.6兆円、そのうち社会保障関係費の伸びを1.5兆円に抑えることを「目安」として遵守することを求めています。そのため、2018年度予算では高齢化に伴う自然増6300億円を最終的に1300億円削減しようとしています。こうした動きは、財政健全化を強調しながら、大企業・富裕層優遇税制の是正などには触れず、軍事費・公共事業費の拡大を容認する一方で、医療・福祉・教育などの予算を削減し国民生活を犠牲にしようとするものです。その上、「消費税率の10%への引き上げは約束どおり平成31年10月に実施すること」を強調するなど、断じて容認できるものではありません。


2 私たちはこれまで、OECD諸国の中で日本の公財政教育支出の対GDP比が最低水準(2014年度は最下位)であり私費負担が大きい(2014年度はイギリス・韓国に次いで3番目)ことを指摘し、教育予算をせめてOECD諸国平均並に引き上げ、教育無償化等の前進により父母負担の軽減を進めることを求めてきました。こうした私たちの主張は29年間で4億5000万筆を集約した教育全国署名に明らかなように父母・保護者、教職員、地域住民、高校生をはじめ、多くの国民が支持する要求となっています。
 しかし、「建議」は「在学者一人当たりで見れば、OECD諸国と比べて、教育支出は高い水準にあり、公財政支出に限っても遜色ない」ため「公財政教育支出の対GDP比だけを見て、量的水準の拡大を目的化することは適切ではない」と、国民の願いに背を向けるものとなっています。
 その一方で、安倍首相が掲げる「人づくり革命」の2兆円に及ぶ政策については「政府の問題意識を共有する」と安倍政権に対して無批判な姿勢を示しています。また、「幼児教育の無償化を進めるにあたっては、公平性の観点から、標準的な保育料を超えた部分までも公費負担の対象とすることは適切ではない」と記述するなど、「無償化」を「誰にも保障される権利」に広げるのではなく「一部に対する支援」に止めようとしていることが明らかです。



3 小中学校の教職員定数については、文科省概算要求の定数改善3415人(2018〜2026年の9年間で約2.3万人)に対して、「児童生徒数の減少に伴う自然減や平成29年度の法改正に基づく基礎定数化を勘案した見通しによれば児童生徒あたりの教職員数は増加する」ため、さらに定数改善を図るには「定量的かつ客観的なエビデンスによる立証やPDCAサイクルの確立を大前提にすべき」としています。
 「働き方改革」については、第一に「教育委員会等から学校に対する調査・報告依頼など事務負担の現状を直視する必要がある」としながら、教職員の時間管理や管理職による業務適正化が不十分であることを理由にあげ「まず、教員の業務の見直し」だと断じています。教職員の長時間過密労働の大きな原因であり、教職員・子どもたちを苦しめている管理・統制の強化や「全国学テ」体制による競争主義的教育の激化などには全く触れていません。さらに、「学校業務のアウトソーシング化」を進める必要があるとするなど、公教育に対する国の責任放棄を促進するものとなっています。国は、「働き方改革」を口実にした民間への丸投げをこれ以上拡大せず、実効ある働き方改革にとりくむことが求められます。



4 「建議」では、新学習指導要領への対応について、小学校の授業コマ数が英語の早期化・教科化により、現行学習指導要領の941コマから新学習指導要領では964コマに増加するものの、文科省の実態調査から「981コマの授業が行われており、総授業時数の観点から見れば、既に新学習指導要領の必要授業コマ数を上回る授業を行っている現状にある」ことを引き合いに出し、まず「必要な授業を上回って実施される授業の英語への振替え」で対応するよう求めています。また、中学校英語教員やALT等の外部人材の活用を示しています。
 英語教育の小学校での早期化・教科化については、依然として反対する声が強く拙速な導入は慎むべきです。「グローバル人材」の育成を求めながら条件整備すら保障しようとしない姿勢は、ブラック企業とも揶揄される学校現場の長時間労働を放置している国の責任を免罪し、さらなる過酷な労働を教職員に強いるものです。



5 高等教育の無償化について、奨学金制度や大学授業料減免の拡充は「真に支援が必要な低所得世帯の若者に絞った対応とすべきである」と求めています。やはりここでも、「建議」がいう無償化とは、誰もが権利として受けることのできる奨学金をはじめとした高等教育の無償化ではないことが明らかになっています。
 さらに、大学生の「基礎学力不足」「学修時間不足」を指摘し、「全ての学生を対象とするのではなく、学修の成果を確認しつつ、勉学に励もうとする意欲がある学生を対象とする、進学後に、勉学に励まない学生は支援の対象から外すなど、学生が勉学するインセンティブを高める工夫」を求めています。
高等教育の無償化は、すべての学生が安心して学ぶことができるよう、国が責任を持ってすすめなければならないものです。日本政府が2012年に留保撤回した国際人権規約社会権規約13条2項(b)(c)が締約国に求めているのは、権利としての教育無償化です。その視点が「建議」ではまったく欠落しています。


6 しかし、今日の財政危機を招いた主たる要因は、アメリカや財界の要求そのままに国民には負担増を求めながら、大企業には優遇税制と大型公共事業などの大盤振舞を続けてきた結果に他なりません。財政審は、本来、政府の財政方針を厳しく監視し、是正すべき責任があります。それを放棄し、国民に財政危機の責任を押しつけるような主張は本末転倒であり、断じて容認できるものではありません。
 日本政府は国連社会権規約委員会から2018年5月31日までに定期報告を提出するよう求められています。そこでは「無償教育の迅速・効果的達成と計画的・具体的・目標明確措置」「朝鮮学校に対する高等学校等就学支援金支給」「高等学校等就学支援金に入学金・教科書代を含める」など、教育の無償化をすすめる具体的な計画・施策が求められています。
 すべての国民の学ぶ権利の保障とそのための教育予算の増額は国際社会の常識です。全教は、2018年度予算編成にあたり、国民的願いであり国際的常識でもある、小学校から高校までの35人以下学級の早期実現、高等教育までの学費の無償化、給付制奨学金の創設・拡充のための財政措置をおこなうことを強く求めるものです。

以  上

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