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フクシマからのアピール [応援してます 東北・関東]

フクシマからのアピール  

    福島県立学校退職教職員九条の会


◇吹き飛ばされた人権


 どこに住みどんな職業に就こうと、かけがえのない個人として尊重され、健康で文化的な生活を送り、幸福を追い求める日々であってほしい。何よりも恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生きてほしい。そんな願いを込めて、私たちは若者を社会に送り出してきました。
 しかし、東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故は、私たちの思いも、若者たちの未来も、一瞬にして打ち砕いてしまいました。さらに日を追うごとに、希望の明かりが見えてくるどころか、「レベル7」が引き起こした問題は広がりつづけ、事態は深刻さを増すばかりです。この事態を目の当たりに、口惜しさと後悔の念が複雑に入り交じるなかで、私たちは三十数年前の日々を思い起こしています。


◇悔しさの中で


 福島第一原発の建設に不安を抱いた住民は、国を相手に裁判を起こそうとしました。しかし原告団に名前を連ねると、たちまちにして地元有権者をはじめ、様々な圧力や切り崩しにあい、つぶされていったのです。それでも第二原発の建設計画が明らかにされると、住民による抗議・反対運動は繰り広げられ、1973年、全国初の公聴会開催にまでこぎつけることができました。ところが、意見陳述人として選ばれたのは、原発推進派の地元有権者らが圧倒的に多く、その上、外部からの傍聴希望者の大量応募で、肝心の地元住民の多くは会場から閉め出されてしまったのです。「原発の危険性を明らかにする」はずの公聴会は、全体としては「原発推進の場」に変えられてしまいました。現在問題になっている「やらせ」は、実に福島での公聴会当時から既に行われていたのです。
 承服できない住民は、翌年、今度は様々な妨害・障害を乗り越えて、404人にも及ぶ大原告団を組織し、国を相手に「原子炉設置許可処分取り消し」を求める裁判を起こしました。私たち教職員の仲間も大勢加わりました。裁判では、使用済み核燃料・核廃棄物の最終処分が未解決であること、原発立地は持続的な地域開発に結びつかないこと、そもそも日本のような地震大国の技術的に未完成な原発を建てること自体に大きな危険があること、万が一にも地震や津波によって重大な事故ともなれば広範・多面かつ長期に放射能被害をもたらし、福島は放射能被害の一大実験場と化すだろう、とまさに今日の事態を警告し、訴えたのでした。
 これに対し国(東電)は、「多重防護策による絶対安全」を主張する一方で、「原子力は安くて安全、資源小国日本に最もふさわしい上、環境に優しいクリーンエネルギー」との「神話」をまき散らしました。しかも第一原発にいたっては、冷却用海水汲み上げ費用節減等のため、海抜35メートルの台地をわざわざ25メートルも削り取って建設したのです。
 17年9ヶ月にも及ぶ裁判は、国(東電)の主張を認め、住民の訴えを退けるものでした。こうして「原発反対」の声を実らせることができず、あの狭い地域に10基もの原発が建ち並ぶことになったのです。
 操業開始後も、東電は事故をひた隠しにし、データを改ざんするなど悪質な犯罪的行為を繰り返し、90年代からは、大津波により制御不能に陥る危険性が指摘されていたにもかかわらず、耳を貸すことはありませんでした。このような姿勢こそが今日の大惨事を招いた根本原因であり、原発事故は一大人災だと言わざるを得ません。
 一方私たちも、原発のある風景に次第に慣らされてくるにつれ、危険性を訴え、運動を継続していたのは一部の人にとどまり、その輪を大きく広げることが出来ませんでした。国・東電・地元推進者たちがこぞって広めた「安全神話」、「原発による地域の振興」の掛け声を押しとどめることも、子どもたちが「原子力、明るい未来のエネルギー」などの標語を作らされている現実があるというのに、これに対抗して「原発の危険性を見抜く力をはぐくむ教育」を、十分にはなし得ませんでした。結果として、たとえ積極的に支持することはなかったにしても、「原発のある社会」を容認してきてしまったことに深い悔いと責めを、私たちは今になって覚えさせられています。「自然豊かな故郷を子どもたちに」どころか、放射能被爆という恐怖にさらしてしまい、子どもたちの未来を守ってやることが出来なかったのです。福島の地で、「子どもたち=未来」と向き合う仕事に生きてきた私たちは、この点において、どんなに悔やんでも悔やみきれません。
 さらには、「憲法九条を守り、教え子を再び戦場に送らない」を共通の願いとしながら、「原子力の平和利用」という言葉に幻惑され、「核兵器の潜在的能力保持のためにも、原発の維持は必要だ」とする本音を十分に見抜いてこなかったことも悔やまれます。


◇私たちの決意


 私たちは今、反省の思いも込め、改めて大きな声で訴えたいと思います。
 政府と東京電力は、「内外の英知を結集して一刻も早く事故を収束させよ」、「被災者の救済に全力をつくせ」、「すべての人々、とりわけ子どもたちを被爆から守れ」、その上で「事故の原因を徹底究明し、安全神話の上に成り立っていたわが国のエネルギー政策を根本から見直し、原発のない社会を目指せ」と。さらに「それらが何ひとつ解決されない段階だというのに、原発の再稼働、さらには原発政策の継続を目論むばかりか、原発の海外輸出を口にするとは、ヒロシマ・ナガサキ・フクシマと、国民を三度も被爆させてしまった国の指導者として恥ずべきことだ」と。
 全国各地・全世界で沸きあがっている「原発ノー」の声に勇気づけられつつ、被爆地フクシマの退職教職員として、私たち自身の決意を表明します。全国の皆さん、とりわけ教職員・退職教職員の皆さん!わたしたちの決意に連帯してください。それぞれの地で、元気にねばり強く、声をあげ続けていきましょう。


○ 私たちは、今こそ未来を担う子どもたちが「恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利」を実現するため、「原発のない社会」を目指します。


○ 世界中がフクシマの教訓を共有すべく、事故原因の徹底究明と責任の所在を明らかにするように求め続け、「人類の新たな一歩がここフクシマから踏み出された」と評される社会の建設に力をつくします。           

                           2011年12月11日
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