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今、教育予算を増やすことこそ 政府の仕事! [教育予算]

【全教談話】財政制度等審議会の「平成28年度予算の編成等に関する建議」について
                   2015年12月2日
                    全日本教職員組合(全教)
                    書記長 小畑 雅子

1.11月24日、財政制度等審議会は、2016年度予算編成に向けた「建議」(意見書)を麻生太郎財務相に提出しました。2016年度概算要求では高齢化に伴う社会保障費の伸びを15年度概算要求より1600億円も減額した6700億円の増加しか認めていませんが、「建議」ではこの伸びをさらに削り、5000億円弱の増加に抑えるよう要求しています。財政健全化を強調しながら、大企業・富裕層優遇税制の是正などの歳入改革には触れず、医療・福祉・教育などの国民生活を犠牲にしようとするものであり、容認できるものではありません。


2. 小中学校の教職員定数については、少子化の進展により2024年度までに児童・生徒数が94万人減り、学級数も2万1000減ると想定し、現行の10学級当たり平均18人(基礎定数16.3人、加配定数1.6人)の教職員の配置割合を維持した場合、2024年度までの9年間で3万7000人の削減が可能とし、2016年度予算では3479人(基礎定数3100人、加配定数379人)の削減を想定しています。さらに、12学級未満の学校(小学校の46.5%,中学校の51.6%)の統廃合を加速させることを求めています。
 また、現在の教育環境をベースラインとして設定し、それ以上に教職員定数の配置が必要な場合は、いじめ・不登校、学力向上などの効果について、確かなエビデンス(根拠)に基づく議論を予算編成のプロセスの中で行うとしています。これは、特別な支援を必要としている生徒が年々増加していることや、いじめ・校内暴力の深刻化、過去最高水準にある不登校、貧困と格差の拡大などの課題が山積した深刻な状態の学校の現状を放置しようとする暴論であり、断じて認めることはできません。


3.国際調査で日本の教員が世界で最も多忙な状況に置かれていることは財務省も認めています。しかし、「授業の専門家」である教員数を増やすことよりも、部活動指導ができるコーチ、カウンセラー、ソーシャルワーカー、外国語やICTの専門家、等多様な協力者の参画により、教員が授業に専念できる環境を整えるとしています。しかしながら日本の教員は、授業以外にも学級経営や児童会・生徒会等の各種の委員会活動、部活動指導、さらには進路指導や生徒指導など多岐にわたって児童・生徒の教育活動に携わっているのであり、特定の業務に携わる職員を配置したからといって教員の業務が単純に減り、授業にだけ専念できるというものではありません。
 世界で最も多忙な日本の教員の状況を改善して、一人ひとりの子どもにゆきとどいた教育条件を保障するためには、OECD平均より小学校で6人、中学校で9人多い1学級当たりの生徒数を減らすことが重要です。衆議院での「35人学級の実現に向けて鋭意努力していきたい」との安倍首相答弁を引き出した国民的世論に応え、不安定な加配措置ではなく、標準法の抜本的改正にもとづいた35人学級の確実な前進を今こそ行うべきです。


4.国立大学についても、18歳人口の減少に応じて「適正規模」とすべきことや「運営費交付金の削減を通じた財政への貢献」を求め、「授業料の引き上げについても一定の議論が必要」「民間資金の導入などを進め、今よりも国費に頼らずに自らの収益で経営を強化していくことが必要」としています。
 大学運営費交付金は2004年に国立大学法人化された後、12年間で1470億円(11.8%)も削減されています。審議の過程において、今後15年間、交付金を毎年1%削減することで、授業料引き上げや産学連携などによる毎年1.6%の自己収入増を求めています。産学連携を進めることは、本来の大学教育・研究をゆがめ、軍産学連携へとつながる危険性があります。  そもそも産学連携による収入増には限界があり、交付金削減は授業料の大幅引き上げを招きかねません。現在でも高すぎる学費のため、大学生の2人に1人が奨学金という名のローンに頼らざるを得ず、その返済に苦しんでいます。高等教育における私費負担が65.7%(OECD平均30.3%)と異常に高い日本の実態を改善するどころか、さらに高めようとする財務省の姿勢は許されるものではありません。OECDのシュライヒャー教育・スキル局長は「日本では大学教育への家庭の負担が大きい。米、英などのように奨学金を活用するなど負担の軽減が課題だ」と述べています。


5.全教は、学校教育に対して、工場の生産品のごとく数値化した目標や成果を要求する財務省や、学校教育が抱える深刻な課題に対して単年度措置の加配定数で対応し続けようとする文科省の姿勢を厳しく批判するものです。OECDが11月24日に発表した調査結果によれば、2012年の日本のGDPに占める教育機関(就学前教育を除く)への公的支出の割合は3.5%(OECD平均4.7%)で、6年連続の最下位となっています。安倍政権は、自己責任に基づく教育政策を直ちに中止し、OECD平均並みに教育予算を増やし、国民的願いであり国際的常識でもある、小学校から高校までの35人以下学級の実現、高等教育までの学費の無償化、「設置基準」策定による障害児学校の大幅増設、給付制奨学金の創設のための財政措置をおこなうことを強く求めるものです。                                                        
以上

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