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小中一貫教育 と 高校早期卒業制度 どう思います? [教育政策・教育「改革」]

あなたは、どう考えますか?

小中一貫教育 と 高校早期卒業制度

全教の問題提起を読まれて、

ご意見は、下記へ

文科省

意見の提出方法

(1)提出手段郵送・FAX・電子メール

(電話による意見の受付は致しかねますので、御了承ください)

(2)提出期限平成26年11月25日(火) 必着

(3)宛先

(郵送・FAX の場合)

住所:〒100-8959 東京都千代田区霞ヶ関3-2-2

文部科学省生涯学習政策局政策課教育改革推進室宛

FAX番号:03-6734-3711

(E メールの場合)※テーマごとに以下のメールアドレスに送付下さい。

電子メールアドレス(←添付しないで、記入)

1.「小中一貫教育の制度化及び総合的な推進方策(審議のまとめ(案))」

→ gakuseikaikaku1@mext.go.jp (←コピーして宛先に貼り付けて)

2.「高校早期卒業制度について」

→ gakuseikaikaku2@mext.go.jp  (←コピーして宛先に貼り付けて)

「小中一貫教育の制度化及び総合的な推進方策について(審議のまとめ(案))」について

論点1 「小中一貫教育が取り組まれている背景」について

「審議のまとめ(案)」は、小中一貫教育が取り組まれている背景として、義務教育の目的・目標規定が新設されたこと、教育内容や学習活動の量的・質的充実への対応、発達の早期化、「中1ギャップ」への対応、地域コミュニティの核としての学校における社会性育成機能の強化などをあげています。

しかし、これらの論拠は、一つとしてこれまでの6・3制の学校制度を9年制にする根拠となるものではありません。

たとえば、「中1ギャップ」については、国立教育政策研究所の生徒指導・進路指導研究センターが作成したリーフで「『中1 ギャップ』という語に明確な定義はなく、その前提となっている事実認識(いじめ・不登校の急増)も客観的事実とは言い切れない」と指摘しています。また、発達の早期化については、昭和20年代と比較して2歳程度成長が早期化していることが論拠とされています。しかし、それらの影響は、白梅学園の無藤氏が教育再生実行会議に提出した資料でも、生活水準の向上や栄養状態の改善におうところが大きいとされているものであり、1980年代以降大きな変化があるわけではありません。さらに、「学校の楽しさ」や「教科や活動の時間の好き嫌い」などについて小学校5年生から肯定的な回答の割合が減少する、中学生については「授業の理解度」も含めて減少するということなども小中一貫とすることの論拠にあげています。しかし、これらの要因についても学習指導要領の問題や国連子どもの権利委員会から「過度に競争主義的」と指摘され続けている日本の教育制度の問題なども含めた分析とはなっていません。

義務教育の目的・目標規定については、教育基本法第2条の目的達成のために入れ込んだものであり、教育の目標を子どもたち一人ひとりの人格の完成におくのではなく、「我が国と郷土を愛する態度を養う」など国が定める規範意識や態度を押しつけるものであり、そうした目的・目標そのものが義務教育のみならず、教育の目標とされること自体が問題です。

以上のように、小中一貫の学校を制度化する論拠そのものが薄弱です。


論点2 「小中一貫教育の現状と課題」について

文科省が行った実態調査結果をもとに整理された現状や課題からも、以下のように小中一貫教育を制度化することの必然性は明らかではありません。

たとえば、取り組まれている背景として、「発達の早期化」があげられていますが、実態調査の結果では、「発達の早期化に対応」としているのは17%にすぎません。

また、学年段階間の区切りは6・3が7割を占めていることにも現されています。それらの背景は、「転出入者への学習指導上・生徒指導上の対応」「児童生徒の人間関係が固定化しないような配慮」「小学校高学年におけるリーダー性や主体性の育成」などを課題としてあげていること、初等中等教育分科会の議論でも何人もが学校段階間の区切りが子どもたちが「ステップアップする契機となる」という意見を述べていることに現されているように、子どもたちの成長・発達にとってマイナス面があるという懸念が払拭されていません。

さらに、教職員にとっては時間の確保や負担の軽減、多忙感の解消などが課題とされており、この点についても初等中等教育分科会で何人もの委員から教職員の加配等の必要性が語られたように課題は解決されていません。


論点3 「小中一貫教育の制度化と基本的方向性等」について

制度化にあたって「審議のまとめ(案)」では、小中一貫教育を導入するかどうかは、設置者が既存の小・中学校も含め選択すること、導入そのものについても設置者の判断とすることとしています。その結果、小学校段階から学校制度が複線化する地域が出現することとなります。就学指定を設置者がおこなうこととされていますが、制度の違う学校への指定が、子どもや保護者に無用な不安や混乱をもたらすのではないか、そのことが子どもたちに否定的な影響を与えるのではないかとの懸念は払拭できません。さらに、学校選択制が導入されれば、子どもと保護者は、6歳の段階での学校種の選択まで迫られることになります。その懸念はいっそう増すことになります。こうした点からも小中一貫教育の制度化には反対です。


論点4 総論

小中一貫教育を制度として導入することについては、教育再生実行会議の「今後の学制等の在り方について (第五次提言)」(以下、「第五次提言」)にもとづくものです。「第五次提言」は、少子高齢化などによる「生産年齢人口の加速度的な減少」「グローバル化の進展」の中で「国力の源である人材の質と量を充実・確保」するとして、「一番のポイントは、…多様化・複線化した制度での人材教育」(2013年10月31日第14回教育再生実行会議での山中文部科学事務次官)の立場で貫かれています。そのため、提言では学校制度の複線化や高校の早期卒業の制度化など競争の教育を強化するためのものとなっており、そもそも、出発点が間違っていると指摘せざるを得ません。

制度化されれば、同じ学区の中に、通常の小・中学校、「小中一貫教育学校(仮称)」、「小中一貫型小学校・中学校(仮称)」、「中高一貫校」などが並立し、子どもたちはいっそうの競争の中に追い込まれることになります。この結果、いじめや不登校などをいっそう深刻なものとすることが懸念されます。

もともと、文科省は2012年にも中教審の初中教育分科会・学校段階間の連携・接続等に関する作業部会において「義務教育学校制度(仮称)創設の是非」について検討し、「小学校入学時に選択できるのか」、「人間関係が固定化し新たに出発する機会が失われる」、「システムとしてどのような効果をもたらすのかが不明」などの反対意見も多く、中教審として導入を見送った経過があります。

そして、上記の作業部会において、「改めて検討する場合」には、小中一貫教育を推進する学校の「成果や課題等について把握、検証」した上で、「一つの学校種として『義務教育学校』を制度化することの是非、初等教育段階から学校制度が複線化することに対する考え方、…『中等教育学校』との制度的整合性等について、十分な検討を進めることが必要である」とも付言されていたものです。こうした経過を踏まえるならば、今回の提言にあたって、少なくともこれらの検討課題が十分解明されなければならなかったにもかかわらず、十分な解明がなされたとは言えません。

また、こうした学制の改変とあわせて「学校規模の適正化」の名の下に学校の統廃合もすすめようとしていることです。現在、小中一貫校の設置が特区制度等を利用して先行的に実施されている地域では、既存の学校の統廃合と一体にすすめられているところがありますが、国としてこうしたやり方を推進しようとするものです。しかも、「統廃合によって生じた財源の活用等」によって「教育環境の充実」にあてようとしていることは、ナショナルミニマムを確保する国の責任を放棄するものです。

以上のように、小中一貫教育を制度化することは、教育をいっそう競争主義的なものとし、財界の求める「人材育成」に活用しようとするものであり、断じて容認できません。


高等学校早期卒業制度について

 

高校早期卒業制度に強く反対します。

1.一握りのエリート育成ではなく、思春期の青年の成長・発達の保障こそが重要

中央教育審議会でだされた「高校早期卒業制度について(要点の整理)」(案)では、高校2年間で50単位以上を修得し、大学入学後に16単位以上を修得した状況をもとに、高校3年の課程を修了した者と「同等以上の学力」を持つことを文部科学大臣が認定し、通常の高等学校卒業と同等の法的地位、社会的評価が得られるようにするとしています。

グローバル社会の国際競争に勝ち抜く人材を育成するため、などという財界の要望で、生徒の人格形成にとって極めて重要な「高校3年生」の1年間を放棄させることを促す高校早期卒業制度には反対せざるを得ません。現在、高校に2年以上在籍して、大学が「特に優れた資質を有する者」と認められた者が大学へ飛び入学する制度がありますが、特定の分野に「特に優れた資質を有する者」というだけでは、偏った成長を促すことに繋がりかねません。思春期にある高校生の豊かな成長・発達を保障するためには、3年間以上の学校における集団生活が必要です。

財界等が期待したほどには広がっていない飛び入学に加えて、スーパーグローバルハイスクール、スーパーグローバル大学、大学でのグローバル人材育成のための大学改革などが矢継ぎ早に行われていますが、一握りのグローバルなエリート育成を目指す政策では、全国の自治体での最重要課題である少子化対策にはなりません。大多数の子どもたちは地域で生まれ・育ち、地域を支える役割を果たしていきます。少子化の流れを止め、地域を活性化するためには、地域の担い手となるすべての子どもたちの教育費の保護者負担を軽減し、少人数学級などのゆきとどいた教育条件をすすめることこそが重要です。


2.高校卒業と同等と見なすには3年以上の学校教育が必要

現在の学校教育法などは、3年間の修業年限と74単位以上の教育課程を通じて、高校教育の目的等を達成するように定めています。高校50単位以上、大学入学後の16単位以上取得というだけでは、単位数を満たさないことはもちろん、高校の単位と大学の単位では教科・科目の目標・内容に質的に大きな違いがあり、単位数の合計だけで解決する問題ではありません。

また、高校の教育課程では、必履修教科・科目の最低合計単位数は31単位以上とされ、1・2学年だけでは編制できずに3学年で履修しなければいけない科目が一定数あります。高校卒業のためには、幅広い普通教育の基礎知識が必要であり、2学年までで高校卒業に必要な必履修教科・科目を受講することは極めて困難です。

高校卒業という資格は、単なる単位の積み重ねだけで得られるものではありません。様々な学校行事や部活動などの自主的・自治的な活動や集団生活を通して得られる人間的成長により、教育の目的である「人格の完成」(教育基本法第1条)や、高校教育の目標である「個性の確立に努める」(学校教育法第51条3)ことができるのです。

その意味でも、高校生活の集大成であり、リーダー的存在としての人間的成長が大きく期待できる最終学年を経験しないことのマイナス面はあまりにも大きいと言わざるを得ません。

文部科学省が行った、飛び入学経験者へのアンケートでは「通常期間の高校生活を経験しないことなど体験が少ない面で不安(7/34名)」「○○高校のOB・OGになれない(例えば同窓会などの組織に入会できない)(7/34名)」などの不安や、科学オリンピック出場者等の高校生からも「通常期間の高校生活を体験しないことなど体験が少ない面で不安(28/64名)」という回答が出されていることは当然です。

飛び入学制度の現状は、千葉大学を含めて6大学が実施しているものの、1998年度(平成10年度)から導入した千葉大学が17年間で77名の入学、ピーク時の2006年(平成18)には9名の入学者がありましたが、ここ数年は年2~4名程度であり、その他の大学は0~1名程度でしかありません。

飛び入学制度や、それを改良した「高校早期卒業制度」に未来がないのは明らかです。

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