SSブログ

最高裁の不当な判決 でも、超勤裁判は大きな意義を持った! [教職員の勤務時間]

京教組超勤是正裁判「最高裁判決」にあたっての声明

教育現場の実態を無視した最高裁の不当判決に抗議するとともに、

たたかいの到達点に確信を持ち、働きやすい職場づくりに前進を!

         2011年7月13日

          京都教職員組合
           京都市教職員組合


(1)2011年7月12日、最高裁判所第三小法廷(大谷剛彦裁判長)は、京都市教組組合員9名が2004年1月に、常態化した違法な超過勤務の是正を求めた裁判で、安全配慮義務違反による損害賠償を認めた一審京都地裁、二審大阪高裁判決を破棄し、原告らのすべての請求を退ける不当判決を行いました。

 私たち京都教職員組合・京都市教職員組合は、現場教職員の過酷な勤務実態と苦悩を無視した最高裁判所に対して、満身の怒りを込めて抗議するものです。

同時に、「もっと子どもたちと関わる時間を増やしてほしい」「ゆとりをもって安心して働ける学校にしてほしい」と、たたかいの先頭に立った9名の原告、さらに、勤務実態の聞き取りから、書面づくりに多忙の中、ご尽力いただいた7名の弁護団の奮闘に心から敬意を表するものです。

 また、要請署名や裁判傍聴など、ご支援していただいたすべての教職員・労働者、教職員組合・労働組合・民主団体のみなさんに心からの御礼を申し上げます。


(2)2009年10月1日に大阪高等裁判所が、すでに京都地方裁判所において勝訴した1名に加え、さらに2名に対して55万円の慰謝料の支払いを命じる判決を言い渡しました。

 大阪高裁判決は、「時間外勤務の時間からすると、配慮を欠くと評価せざるを得ないような常態化した時間外勤務が存在していたことは推認でき」たこと、また、「時間外勤務が極めて長時間に及んでいたことを認識、予見できていたことが窺われるが、それに対して、改善等の措置を特に講じていない点において、適切さを欠いた」ことを断罪し、管理職の安全配慮義務違反を明確にしました。

 このことは、教育行政に影響を与えるとともに、全国の教職員を大きく励ましました。


(3)これに対して最高裁判決は、第一に大阪高裁で勝訴した3名の原告の勤務実態について、月の時間外労働時間が86時間から101時間あったことなど、その勤務実態を大筋で認めました。しかし、明示的・黙示的に時間外勤務命令が行われていなかったことを理由に、「給特法」及び給特条例との関係で違法ではないとしました。

 最高裁は、従来の給特法の解釈(教員の自由意志を強度に拘束する場合でなければ違法でない)に固執し、教職員の深刻な勤務実態の改善に背を向けたもので、この判決の立場は容認することはできません。

第二に、安全配慮義務違反について、使用者や管理監督者に安全配慮義務(業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことのないよう注意する義務を負う)があり、この考え方は、公立学校の教職員にも適用されることを明確にしました。そのことは、大阪高裁の立場を維持するものです。

 しかし、原告3名に、「外部から認識し得る具体的な健康被害又はその兆候が生じていた事実が認定されておらず、さらに、各校長が健康状態の変化を認識し又は予見することは困難な状況であった」として、管理職の安全配慮義務違反を認めませんでした。

 長時間・過密労働自体が、心身に対する大きなストレスとなり、過労死や健康被害を生む要因になることは医学的にも明らかにされています。この判決の考え方は、先の労働安全衛生法の改正(月100時間を超える時間外労働があった労働者に対する医師の面接指導の実施)の趣旨にも反しており、時代の流れに逆行した見識に欠ける判決と言わなければなりません。


(4)私たちが提訴した2004年から学校現場にも大きな変化が生まれています。 「教員には時間外労働はない」とか「教員の仕事は勤務時間の把握になじまない」としていた文部科学省が、全国的な教員の勤務実態調査(2006年度)を行い、その深刻な超過勤務の実態が明らかになりました。

 また、全国各地で教育委員会が、教職員の勤務時間管理や時間外労働の縮減に取り組みはじめています。

 京都市においても、2009年度から教育長名での超過勤務の縮減を求める通知を発出し、タイムカードやICカードを使っての勤務時間管理の試行実施や、指名研修・研究発表の縮小、教員の事務負担の軽減などが始まっています。

 これらの変化に、私たちのたたかいや、京都地裁判決・大阪高裁判決が大きな影響を与えていることは明らかです。


(5)私たちは裁判そのものに勝利することはできませんでした。しかし、私たちが裁判の目的として掲げてきた

① 教員の勤務実態を多くの国民に知らせること。

② 「給特法」の問題点を明らかにすること。

③ 子どもの教育の充実のために超過勤務を是正し働きやすい職場をつくるという

3点については、決して小さくない到達点を築けたと確信しています。

 今回の最高裁判決に対する京都市教委のコメントの中にも、「今後も教員の勤務条件の向上や超過勤務の縮減に努める」との文言があり、教育委員会とも超過勤務の是正・縮減が必要との共通の認識を築き、具体的な協議が行えるところまできています。


(6)今回の最高裁判決は一つの通過点であり、たたかいは決して終わったわけではありません。

 今、東日本大震災と福島原発事故の影響で教育を受ける権利が著しく侵害されている子どもたちの問題や、深刻な貧困から子どもを守る取り組み、確かな学力を保障する課題など、子どもと教育をめぐる問題は山積しています。このような山積する教育問題の解決のためにも、教職員の権利の確立と教育条件の改善は喫緊の課題です。

私たち京教組・京都市教組は、教職員に事実上の裁量労働を強いる温床となっている「給特法」そのものの改正をめざすたたかい、ひとりひとりの子どもたちにしっかり寄り添った教育を実現するための30人学級実現など抜本的な教育条件改善のたたかい、「ディーセントワーク」を実現し、教職員が人間的生活を回復する取り組みなどを、すべての教職員・父母・国民との共同を広げ、それらの実現の先頭に立って奮闘する決意を表明するものです。
                              以上

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。